2000年7月、マイリス・ヤナツイネン宣教師が日本での働きを終えて帰国されました。師は、伝道聖研を広めることを主眼に活動してこられました。この聖書の学び方を日本に残しておきたいと、6月までに手引き書を相次いで出版されましたので、帰国の前に伺ったお話をご紹介します。



著者紹介:マイリス・ヤナツイネン(Mailis Janatuinen)

1949年、フィンランド生まれ ヘルシンキ大学で文学と神学の修士を取得。1976年より、ノルウェールーテル伝道会(NLM)の協力団体フィンランドルーテル海外伝道団(FLOM)の宣教師として、日本にて働く。
またキリスト者学生会の主事として、フィンランドおよび日本で長年活動する。この働きを通して、フィンランド語、英語、日本語による伝道聖研のテキストを著している。その内の一部は、ロシア語、エストニア語、モンゴル語、ノルウェー語などに翻訳されている。

質 問 伝道聖研とはどのようなものでしょうか。
マイリス師 教理を教えるより、みなさんにイエス様を紹介してイエス様と個人的に出会わせることが目的です。「よき知らせの学び」と名付けました。これを通してノンクリスチャンの友達や家族にイエス様を紹介することができます。
質 問 伝道聖研に出会われたときのことを話してください。
マイリス師 私は日本の宣教師になるまえ、フィンランドのKGKでも働いていましたが、伝道聖研は知りませんでした。1983年、3回目に日本に来てKGKの主事になったのですが、そのとき、学生たちがやっている聖研に参加したのが初めてでした。学生は自分たちで作った質問で話し合っていましたが、その中で私はすごい発見を聞きました。私が今まで考えたこともないことを、受洗して間のない学生の口から聞いたのです。聖霊はみんなの口を通して語ってくださるということを、はっきり見ることができました。教職者でなくても、みことばを解きあかすことができると分かって、これは、教職者が少なくて人口の多い日本にぴったりの方法だと考えるようになりました。
質 問 本を書くようになられたのは?
マイリス師 学生たちの聖研を通して、いつの間にか自分でこんな質問を作りたいと思うようになりました。召しを受けたのでしょうか。とにかく書きはじめました。学生も喜んでくれたので、やりがいがありました。そんなとき、病気になったんです。これで死んでしまうと思ったとき、一番心残りだったのが、聖研を日本語の本にしなかったことでした。病気は死ぬようなものではなくて、また日本での働きが許されました。次の任期で日本に来たときは、家庭集会の多い教会で働きました。そこで私は伝道聖研を進めて、「イエスに会ってみませんか1、2」を書きました。そして今度の任期の間に4つの福音書それぞれについて「よき知らせの学び」の手引きを完成させました。これでもう、思い残すことはありません。
質 問 教会で「よき知らせの学び」を進めて、どんなことがありましたか。
マイリス師 最初は信徒が司会することにだれも自信がなかったのですが、やってみるとおもしろい、だれでもできるということを理解してもらえました。みなさん、喜んでこの学びに参加するようになりました。家庭集会を通して教会につながる人も出てきました。
質 問 みなさんの反応はどうですか。
マイリス師 電話や手紙をよくもらいます。求道者がイエス様を好きになったということが多いですよ。今週聞いたことですが、「ナインのやもめ」の箇所で、ノンクリスチャンの方が「イエス様はなぜ息子の墓に向かう母に『泣かなくてもいい』と言われたのでしょう」という質問に、泣きだして本当にイエス様との出会いとなった、ということです。またもうひとつは、イエス様が福音書の中の人と同じように自分をも助けてくださることがよくわかって、クリスチャンにとってもうれしい学びだと話してくださる人がありました。
質 問 あと、日本に帰って来られることはないということですが。
マイリス師 はい、これが最後の任期です。実は、私がなりたかったのはアフリカの宣教師だったので、日本に行くと決まったときは泣いてばかりだったんです。けれど、日本に来て本当によかった。その上、私は日本ですばらしい伝道聖研に出会うことができました。私が書いた本は数ヵ国語に勧訳されて、それぞれの国で用いられています。特に、はじめのルカの手引き書は10か国語以上になっています。一番新しいのはロシア語で1万冊出版されましたが、もう売り切れたと聞いています。この本を通して、モンゴルでもロシアでも聖研の訓練会を開く機会が与えられました。伝道聖研は日本でもらった私の生涯の宝物です。私を日本に連れてきてくださったイエス様に心から感謝します。
私の体はフィンランドに帰っても、心の半分は日本に残っています。そして聖研の手引きがありますので、これを通してこれからも日本で伝道し続けられると思っています。