創世記 29:14 ヤコブがラバンのもとにひと月ほど滞在したある日、
29:15 ラバンはヤコブに言った。「お前は身内の者だからといって、ただで働くことはない。どんな報酬が欲しいか言ってみなさい。」
29:16 ところで、ラバンには二人の娘があり、姉の方はレア、妹の方はラケルといった。
29:17 レアは優しい目をしていたが、ラケルは顔も美しく、容姿も優れていた。
29:18 ヤコブはラケルを愛していたので、「下の娘のラケルをくださるなら、わたしは七年間あなたの所で働きます」と言った。
29:19 ラバンは答えた。「あの娘をほかの人に嫁がせるより、お前に嫁がせる方が良い。わたしの所にいなさい。」
29:20 ヤコブはラケルのために七年間働いたが、彼女を愛していたので、それはほんの数日のように思われた。
29:21 ヤコブはラバンに言った。「約束の年月が満ちましたから、わたしのいいなずけと一緒にならせてください。」
29:22 ラバンは土地の人たちを皆集め祝宴を開き、
29:23 夜になると、娘のレアをヤコブのもとに連れて行ったので、ヤコブは彼女のところに入った。
29:24 ラバンはまた、女奴隷ジルパを娘レアに召し使いとして付けてやった。
29:25 ところが、朝になってみると、それはレアであった。ヤコブがラバンに、「どうしてこんなことをなさったのですか。わたしがあなたのもとで働いたのは、ラケルのためではありませんか。なぜ、わたしをだましたのですか」と言うと、
29:26 ラバンは答えた。「我々の所では、妹を姉より先に嫁がせることはしないのだ。
29:27 とにかく、この一週間の婚礼の祝いを済ませなさい。そうすれば、妹の方もお前に嫁がせよう。だがもう七年間、うちで働いてもらわねばならない。」
29:28 ヤコブが、言われたとおり一週間の婚礼の祝いを済ませると、ラバンは下の娘のラケルもヤコブに妻として与えた。
29:29 ラバンはまた、女奴隷ビルハを娘ラケルに召し使いとして付けてやった。
29:30 こうして、ヤコブはラケルをめとった。ヤコブはレアよりもラケルを愛した。そして、更にもう七年ラバンのもとで働いた。
ヤコブは、ラケルと結婚することを条件に、ラバンのもとで7年働くことになる。
しかし、ラバンは、姉のレアより先に妹のラケルが嫁ぐことはできないと言って、レアを先にヤコブに妻として与え、ヤコブはさらに7年、合計14年もの歳月をラバンのもとで過ごすことになるのである。
ヤコブにとってみれば、ラバンの行為は重大な契約違反であるし、偽りの約束をもってヤコブをいいように利用したとも言えなくもない。
ヤコブの14年間の労働は、今風に言えば、ブラックであろうし、少なくとも期待に胸を膨らませて過ごした最初の7年間も、あとになってしまえば、暗黒の7年間であったということになってしまったことであろう。
人はそれぞれの利害関係によって行動するし、それによって裏切りや憎しみに発展することもある。
ヤコブの場合は、せっかくのお祝い事が台無しとなってしまったことであろう。
誰もが自分の都合や利益を優先して考え行動するが、それが他者に対して悲劇をもたらしていないか、立ち止まって吟味していく必要がある。
それでもヤコブはさらなる7年を過ごした。
犠牲を払ってでも、時間を費やす価値があると考えたからであろう。
キリストがご自分の命を支払って、私たちを救って下さったことも同じ。
私たちに価値を見出してくださるのである。
感謝をしつつ、自己都合で他者に迷惑をかけることのないような生き方を全うしていきたいものである。