希望の源である神が、信仰によって得られるあらゆる喜びと平和とであなたがたを満たし、聖霊の力によって希望に満ちあふれさせて下さるように。
ローマ15章13節
 
今日の使徒書、ローマ信徒への手紙15章4~13の箇所を通して覚えたいこと、それは、理想と現実ということです。

理想
5~6節の中で、「キリスト・イエスに倣って」ということが言われています。トマス・ア・ケンピスという中世の思想家が書いた「キリストにならいて」という書物がありましたが、その書名を思わせるような表現です。パウロは、「キリスト・イエスに倣って」という言わばたいへんな理想をここで掲げているということです。

現実
さて、それでは、キリストに倣う生き方を通して、具体的にどのように生きるようにと勧められているかというと、それは、1節でこのように言われています。「わたしたち強い者は、強くない者の弱さを担うべきであり、自分の満足を求めるべきではありません」。この「強い者」というのは、「能力のある者」という意味のことばが使われています。また、コリント信徒への手紙を見ると、「知識のある者」、あるいは、「自由な者」と表現しています(コリント信徒への手紙第一8章10節、9章1節)。「強い人」「能力のある人」、それは、クリスチャンは自由に飲んだり食べたりすることができるのだという広い自由な理解、知識を持っている人のことです。とするなら、それ自体は、よいことなのではないでしょうか。でも、その知識でもって、そこまでの知識に至っていない人々を裁いているという現実があった、ということです。

解決
では、パウロは、そのような現実の問題に対して、どのような解決の道を見出そうとして行ったのでしょうか。二つのことに心を留めたいと思います。それは、人間の真実ではなく、神の真実の上に立つ、そこに、この問題の解決の道があるということ(8~9)、人が変えられる、それは、人間の努力によらず、神の働きであり、聖霊の働きであるということです(5~6)。

(前川隆一牧師)