ルカの福音書8章26~39節
6/8のペンテコステ(聖霊降臨祭)以降、教会暦では「聖霊降臨後主日」という期間に入りました。この期間はペンテコステからアドベントまで約半年間続きます。典礼色は緑で、聖霊を受けたクリスチャンが草木のように成長し、豊かな実を結ぶようになることを目指す期間です。だから特にこの時期は御言葉に耳を傾け、霊的に成長させていただきましょう。
きょうの福音書は、イエス様が、ユダヤ人から忌み嫌われる異邦の地「ゲラサ」へ赴いた出来事を記しています。そこに、悪霊に取りつかれ、墓場に住み、鎖を断ち切るほど異常な力を持つ男がいました。ゲラサの人々も彼を忌み嫌い、隔離していました。これは現代にもはびこっている「今だけ・金だけ・自分だけ」という価値観を象徴しています。イエス様がこの人から悪霊を追い出したあとも、ゲラサの人々は彼の回復を喜ぶより、死んだ豚の損害を憂慮してイエス様に立ち去るよう求めました。他者を見下し、切り捨て、物欲を優先するこの価値観こそ悪魔の特徴であり、現代社会にも蔓延しています。男に取りついた悪霊は「レギオン」(多数)と名乗りました。「この世の神」(Ⅱコリント4:4)であるサタンが、無数の悪霊たちを使って、人々の心に「今だけ・金だけ・自分だけ」という価値観を刷り込んでいるのです。人間の力では悪魔に勝つことは出来ません。しかし勝利はイエス様にあります。イエス様は一言で悪霊を追い出され、男は「正気」に返りました。それはただ「通常の生活を送れるようになった」という意味ではなく、イエス様を救い主と信じるまことの「知恵」を得た、ということです。彼はイエス様と共にいることを願いましたが、イエス様は彼に「家に帰り、神があなたにどんなに大きなことをしてくださったかを、話して聞かせなさい」と命じました(39)。ゲラサを追われたイエス様の代わりに、悪霊を追い出してもらったこの人が、イエス様の福音をゲラサの地に伝える「光」となったのです。
私たちも、自分が「今だけ・金だけ・自分だけ」になっていないか日々反省し、悔い改めてイエス様の十字架に立ち返りましょう。それだけが悪魔に勝利する方法です。そのときイエス様から「光」としての仕事を任されます。イエス様を信じた人には聖霊様が与えられていますから、イエス様も安心して、闇に覆われたこの世界に私たちを遣わしてくださいます。「君にまかせた。福音の光でこの地を照らしなさい。」と。
(永田 令牧師)